怖すぎる実話怪談 叫喚の章

実話怪談本

結城伸夫:著 イースト・プレス
2022年6月20日 初版第一刷発行

ネット上で投稿された体験談をピックアップした作品集である。主宰の結城伸夫氏=雲谷斎氏は20年以上この投稿サイトを運営している、謂わば老舗店主である。

21世紀が始まる頃、まだ音声や動画を個人が体験談を投稿出来るような環境がなかった時代、ネットの怪談と言えば自分でサイトを運営するか、そのサイトに設けられた掲示板や直接運営者に《投稿》するしかなかった。当然投稿者は素人で、その人が直接文章を作成して投稿するわけで、特に掲示板ではほとんど朱が入らない状態で文章が掲載されることになる。それ故「投稿作品=玉石混淆」というイメージがつきまとった。実際、取るに足らないような怪異を大仰に書いたもの、文があまりにも稚拙で読むのに苦労するものなども往々にしてあったし、思わず溜息が出るほど凄い怪異も掘り出し物のように存在した。
また、こういう投稿の場には必ず《常連》と呼ばれるメンバーがいた。彼らの多くはいわゆる「視える人」で、自身の体験を中心にいくつもの話を投稿した。さらに突如彗星のように現れて短期間に大量投稿して、その後ふっつりと消えていくようなメンバーもいた。そのような提供者が入れ替わり立ち替わり登場しながら、どんどん読者を増やしていくのが、この種のサイトであった。

というような投稿サイト特有の事情を考えると、本作は内容の濃淡は否めないところであるが、往年の一大ジャンルの中では上質の部類であるという感想である。特に“引き”の強い投稿者が1名加わっており、怪異のレベルを引き上げているのがポイントである。

そして最後に怪談作家による5編の特別寄稿があり、しっかりと締めてくれる。昔ながらの体裁であるが、そつなくまとまっているという印象。